中国飲料大手「農夫山泉」の2024年決算が注目を集めています。
『36氪』によると、同社は「組織的かつ長期間にわたる中傷と攻撃を受けた」ことによって、過去に例のない打撃を受けたと報告。売上高は前年比0.5%増の429億元(約9100億円、1元=21円)、純利益は0.4%増の121.2億元(約2540億円)と、微増にとどまりました。
特に主力商品の「ボトル飲用水」は、売上が21.3%減の160億元(約3360億円)と大幅に落ち込み、売上全体に占める割合も47.5%から37.2%へと縮小。運営利益率も36%から31%に低下し、在庫も大幅に増加しています。
こうした背景には、SNSなどで起きた不買運動や誹謗、中傷による影響があると見られています。
そんな中で、農夫山泉の業績を支えたのが、無糖茶飲料「東方樹葉」でした。
2024年の茶飲料事業は前年比32.3%増の167.5億元(約3510億円)と大きく伸び、初めてボトル飲用水を上回る部門に成長。「東方樹葉」はその中核を担っており、販売額は前年同期比で90%以上の伸びを記録したとのことです。
人気の背景には「0糖・0カロリー」という健康志向のトレンドがあり、「水では味気ない」「甘い飲料は避けたい」と考える層の支持を得ています。
また、SNSでは「東方樹葉ダイエット」や「体にいいドリンク」としても話題になっており、コーヒーなどと混ぜて飲むレシピも出回っています。
東方樹葉のヒットは、農夫山泉の継続的な努力と販売網の強さによるものです。同社は全国243万の販売拠点を持ち、そのうち約188万は地方都市に展開しています。
この無糖茶ブームを受けて、競合各社も続々と新商品を投入。市場では1年で100種類以上の無糖茶が登場しましたが、東方樹葉は60%以上の市場シェアを維持しており、サントリーなどの海外勢を大きく引き離しています。
一方、落ち込んだ水事業においても農夫山泉は水源地確保の強化や低価格帯商品の投入などで巻き返しを狙っており、今後は果汁飲料や農業連携を通じた新事業にも力を入れる方針です。
今回の業績発表からは、SNSなどによるイメージダウンの影響の大きさと、企業がどのように多角化やブランド戦略でリスクを乗り越えようとしているかが見えてきます。
特に中国では健康志向がますます強まり、無糖飲料への関心が高まっているようです。この流れは今後、他の飲料メーカーにも広がっていく可能性がありそうです。
参考:东方树叶,撑起农夫山泉