中国政府は、住宅賃貸市場の信頼性と専門性を高めるため、「住宅賃貸条例」を2025年7月21日に発表しました。施行は同年9月15日からです。
『証券日報』によると、この条例の導入は「監督強化と基準の引き上げに加え、企業に対して休眠不動産の活用、サービス品質の向上、信用体制の整備を促す内容」とされています。特に、老朽化した工場や商業施設、自社保有住宅の改装を通じた賃貸活用が奨励されており、「供給の多様化」と「不動産資産の活性化」が期待されています。
この条例を発表する前に、すでにこのような動きがありました。
例えば、広州市の不動産会社「珠江実業集団」は、自社の低効率な不動産を改装し、長期賃貸アパートを開設。開業の初月で95%を超える入居率を達成しました。また、北京市の「金隅集団」は工場跡をハイテク産業園に転用し、大きな経済効果を上げています。
上海の不動産研究機関「易居研究院」の副院長・厳躍進氏は、「これまでの長期賃貸企業の多くは拡大に頼ってきたが、今後は“改装による供給強化”が成長の鍵となる」と指摘しています。今回の条例では、「転貸を行う企業は専用の資金管理口座を設けること」が求められており、運営の透明性や責任がより重視されるようになります。
また、『中指研究院』の調査によれば、2025年6月時点で全国の上位30社による賃貸住宅の供給戸数は135万9000戸に達していますが、市場全体に対するシェアは依然として低いとされています。そのため、政策的な支援によって企業の専門化と集中化がさらに進むと見られます。
さらに、投資商品のひとつであるREITs(不動産投資信託)市場の拡大も見込まれています。住宅賃貸産業研究院の院長・趙然氏は、「賃貸住宅を多様なルートで供給することは、公的支援と市場活用を組み合わせた供給体制の強化につながる」と述べています。
都市部では住宅購入のハードルが高いため、若年層を中心に長期賃貸の需要が高まっている中国。このような制度改革により、安心して長く暮らせる賃貸環境の整備が本格化すると見られます。日本と同じく都市集中や高齢化の課題を抱える中国で、この新たな住宅政策がどのように機能するか、今後も注視されます。