中国の高級白酒市場をけん引してきた「茅台酒(マオタイ)」に、今大きな変化が起きています。
『36氪』によると、中国貴州省の白酒大手・貴州茅台の株価が、2025年5月中旬に1株1645元(約3万3000円、1元=20円)を付けたあと、わずか1か月で1427元(約2万8500円)まで下落。およそ13%も値を下げたことが話題になっています。
背景には、政府の新しい方針があるようです。2025年5月に改訂された条例により、公務員の会食では酒類が全面的に禁止されたようです。これにより、白酒の需要が減るとの見方が広まり、白酒関連株がそろって下落しています。他の有力酒造メーカーの株も軒並み下げています。
さらに、大型セールを行うネット通販各社の影響も無視できません。中国恒例の6月の「6・18セール」では、茅台が1499元(約3万円)という低価格で販売され、オフラインの販売店にとっては大きな打撃になりました。店頭では849元だった「茅台1935」も、ネットでは699元(約1万4000円)と150元の差がつきました。こうした値下げ競争が広がるなか、卸売業者の利益は圧迫され、仕入れへの慎重さが強まっています。
茅台の卸価格は、今年に入ってからすでに290元(約5800円)以上下がっており、業界では「このままでは赤字になる」と不安が広がっています。『瑞銀証券』も、「在庫が積み上がり、価格下落が続く可能性がある」と警告を出しました。
一方で、白酒業界全体が大きな転換期にあるとも言われています。若者の間では白酒離れが進んでおり、調査によるとZ世代(18~28歳)のうち、白酒を選ぶ人はわずか13%にとどまっています。また、「同僚と飲み会」や「無理な飲み会」といった伝統的な酒席文化は、若者から「時代遅れ」と見なされているようです。
その反面、人気を集めているのがコーヒーやミルクティーなどの“軽い”飲み物。新しい消費スタイルとして注目されています。例えば新茶飲料チェーン「蜜雪氷城(MIXUE)」などです。
茅台もアイスクリームやコーヒー、チョコレートとのコラボなど、若者向けの展開を試みてきましたが、大きな成果にはつながらなかったようです。
「一代ごとに違う茅台がある」と言われるように、今の若者には白酒は響かない時代なのかもしれません。かつて“信仰”とも言われた茅台ブランドも、今やその価値が見直されつつあります。今後の動向が注目されます。
参考:贵州茅台,加速下跌