中国の消費市場で、「高級ブランド」の苦境が鮮明になっています。
『創業邦』によると、2025年夏には高級路線の食品・飲料ブランドが次々と売却や資本注入を模索しています。
例えば、中国高級菓子チェーンの「良品鋪子」は武漢市の国有企業に株式29.99%を約15億元(約320億円、1元=21円)で譲渡。また、コーヒーチェーン大手の「スターバックス」は中国事業の一部売却を検討中で、評価額は350億元(約7,350億円)にのぼるとされています。さらに高級アイスクリームの「ハーゲンダッツ」中国事業も買い手探しに入ったとのことです。
背景には、消費者の節約志向が加速していることがあります。
以前はスターバックスでコーヒーを飲んでいた会社員層が、現在は低価格の「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」や「蜜雪冰城(MIXUE)」に流れるなど、高価格帯商品が敬遠される動きが顕著です。ハーゲンダッツもアイスクリーム火鍋(約200元=約4,200円)など高額メニューは需要が減少し、店舗数もピーク時の400店から263店にまで減少しました。さらに、新興ブランドや低価格チェーンの攻勢、SNSへの対応力不足、商品開発の遅れが打撃となっています。
低価格戦略への切り替えを図ったブランドも苦戦しています。良品鋪子は2023年に大規模値下げを実施しましたが、2024年には赤字に転落。量販型の菓子店が4割引の価格で商品を提供し、市場を席巻しています。スターバックスも20~30元という価格設定が中途半端で、地方都市では客離れが進行中です。
買収側にも課題があります。武漢国有企業による良品鋪子再建は、供給コストの高さや消費者ニーズの変化をどう克服するかが鍵となります。スターバックスやハーゲンダッツもブランド価値を維持しつつ、市場価格に適応する必要があります。
百貨店をはじめ、他の高級業態でも同様の売却・縮小が進んでおり、「高級ブランド退場・低価格主流」の流れが市場全体に広がっているようです。