深夜の中国都市部では、灯りが消えることがありません。ビルの窓明かり、24時間営業のコンビニ、スマホの光…。今、中国では「夜行経済」とも呼ばれる新たな消費スタイルが若者たちの間で広がりを見せています。
近年、深夜帯に活発になるオンライン消費が一つのトレンドとなっており、しかし多く買われたのは睡眠を促すサプリメントです。その背後には「眠れない若者たち」の存在があるようです。
SNS、動画アプリ、オンラインショッピングといったデジタル行動が夜間に集中し、それがさらなる覚醒状態を引き起こすという夜型スパイラルが問題視され始めています。
とくにZ世代と呼ばれる1990年代後半から2000年代生まれの若者たちは、学業や仕事、社会的なプレッシャーの中で、デジタルの進化でより多くの時間を携帯で費やしてしまうことも眠りの質を悪化しています。
『中国睡眠研究会』が2025年3月に発表した調査では、18歳以上の中国人のうち、約48.5%が睡眠に問題を抱えているとされ、とくに30歳以下の若年層では、ここ数年で受診者数が20%も増加しているという結果が出ています。
職業別に見ると、IT技術者やメディア関係者、医療従事者などが特に「睡眠の質」に課題を抱えており、「日中はカフェインで活動し、夜は何らかの手段で眠りを補う」という生活スタイルが定着しつつあります。
学生も例外ではありません。高校・大学受験を控えた学生たちは、日々の勉強に加えて、課外活動やインターンシップなどにも追われ、平均睡眠時間は7時間を大きく下回るケースが多く見られます。
特に高校3年生の一部は、5時間以下の睡眠で過ごしているという調査結果もあり、「眠る時間も惜しんで努力する」ことが美徳とされる社会的風潮も影響しているようです。
さらに、『CNNIC』の統計によると、2024年時点で18~35歳のインターネット利用時間は平均6.5時間に達し、その多くが深夜に集中しています。このような「寝る前スマホ習慣」が睡眠の質をさらに悪化させていることも見逃せません。ハーバード大学医学部の研究によれば、就寝前2時間のスマートフォン利用は、睡眠を促すホルモンの分泌を約1.5時間遅らせるとされています。
このように、中国の若者たちは「自己管理」よりも「自己犠牲」に近い形で日々を過ごしており、心身の健康に対するリスクも無視できなくなってきています。