中国の旅行業界で、オンライン旅行代理店(OTA)と従来型旅行社との間で激しい「店舗争奪戦」が繰り広げられています。
「今後、店舗を持たず、顧客との感情的つながりを築けない旅行社は生き残れない」との見方も広がっているそうです。
現在、中国国内の旅行社は全国で6万2776の店舗がありますが、ある大手OTAの店舗はすでに6500店舗以上を展開し、その比率は全国の店舗数の10%に達しているそうです。
旅行社側も、無料コーヒーやプリントサービス、傘の貸し出しなど、生活圏に密着したサービスで「15分観光生活圏」を築き、中高年層や団体顧客など、オンラインでつながりにくい層を囲い込もうとしています。
背景にはOTAとの関係悪化があります。かつては旅行社がOTA上で直接販売する契約が主流でしたが、近年はOTAが代理販売方式へと移行。旅行社はブランドが前面に出ず、販売利益も減少する状況になっています。
このため、旅行社にとって店舗は「ブランドを見せる数少ない場」となっているのです。
さらに、オンライン集客コストの上昇も店舗回帰を後押ししています。一方で、商業施設の空き店舗率は全国平均で18.7%(2025年5月時点)に達し、賃料は15~30%下落。物件を確保しやすい状況でもあります。コロナ禍で多くの店舗が閉鎖した後だけに、好立地を押さえる動きは加速しています。
しかし、このメリットをOTAも同じく享受しており、むしろ旅行社よりも多くの店舗を出店して優良立地を先取りしています。結果として、旅行社が出店しても、消費者の認知度や信頼感で劣るリスクがあります。
OTAのブランド力に埋もれないためには、旅行社が独自資源や特化型サービスなどで差別化する必要があると考えられます。