冷蔵庫を開けたらネギがない!そんなときでも、スマホをサッと開けば20分で届く――。いま中国では、こんな“即配”がすっかり当たり前になってきています。
2025年5月30日付の『新華網』によると、最近中国で注目を集めているのが「インスタントリテール(即時小売)」という新しい買い物スタイルです。料理中に足りない食材、急に必要になった薬、旅行先で忘れたパジャマまでも、注文すれば30分以内に自宅やホテルに届くサービスが続々登場しています。
このような場面は今や中国の都市部では当たり前の光景になってきているようです。たとえば、深夜に急に必要になった解熱剤やスマホの充電器、さらには旅行に行った時に持ち忘れたパジャマなど、すぐに必要な物があれば、アプリから注文してすぐ届く。「買い物=出かける」時代は過去のものになりつつあるのかもしれません。
ここで紹介されている「インスタントリテール(即時小売)」とは、「注文してから30分以内に商品が届く」という超スピード配達の仕組みのことです。もともとはレストランなどのデリバリーから始まりましたが、今では日用品、薬、衣類、化粧品、さらにはゲームソフトなど、あらゆるものが対象になってきています。
実際に、中国の大手EC企業もこの分野に力を入れています。京東(JD.com)は「自営秒送」というサービスを全国展開し、10万以上の店舗と提携して30分以内の配送を実現。同じく美団(Meituan)やタオバオもそれぞれ独自のブランドで激しい競争を繰り広げています。
『新華網』の記事によると、こうしたサービスの広がりによって、即時小売の市場規模は2023年時点で約6500億元(約13兆円、1元=約20円)に達し、2030年には2兆元(約40兆円)を超える見込みです。
「すぐに手に入る」「欲しい時に届く」という便利さは、特に若い世代に大人気。ある調査では、95年以降生まれの半数以上が「買ったその日に届いてほしい」と考えていて、多少高くても早く届くならOKという意識があるそうです。
最近では、深夜に化粧品を頼んだり、旅行先で必要になったパジャマや水着などを注文したり、細かいシーンでのニーズにも対応が進んでいます。また、物流の裏側では、商品を街中の倉庫にあらかじめ配置したり、コンビニのような店舗と倉庫を一体化させたりして、より早く届けられる工夫が進んでいるとのことです。
専門家たちは、インスタントリテールは単なる「ネットスーパーの便利版」ではなく、物流や流通そのものを変える大きな転換点になると指摘しています。
日本でも少しずつ「即時配達サービス」が登場していますが、中国ではその規模もスピードも圧倒的です。これからの買い物の在り方を考えるうえで、中国のインスタントリテールはとても参考になる存在です。