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「0円ミルクティー」はだれ得か?中国デリバリー業界の葛藤

中国のデリバリー各社が飲料を中心とした割引キャンペーンを再開しました。

SNSでは「無料ミルクティー」が話題となり、注文数は一気に急増しましたが、しかしその裏では、消耗戦の再来に対する企業と投資家の懸念が高まりつつあります。

7月12日、中国の大手デリバリーサービスである「美団(Meituan)」やアリババ傘下の「淘宝即時配送(Taobao Flash Delivery)」は、ドリンクのカテゴリーを中心に大幅な割引クーポンを発行したそうです。特にミルクティーやコーヒーが対象となり、「0円デリバリー」として注目を集めました。

現地では人気チェーンに注文が殺到。ある配達員は「通常の2倍近い報酬になっている」と語り、現場は一時的に活況を見せています。

ただし、利用者にとって「無料」が額面通りとは限りません。クーポンは特定メニュー限定、利用可能な店舗も限られ、さらに配達には一定額以上の注文が条件となるなど、実際には追加費用が発生するケースも多いようです。

こうしたキャンペーンの再開は、企業間の価格競争が再び激化していることを示しています。報道によると、大手の美団は「防御的立場」を維持しつつ、競合の動きに応じてキャンペーン規模を調整しているといいます。一方、淘宝も割引額を段階的に抑えるなど、全体的にキャンペーンも「熱量」は前回よりもやや落ち着いているようです。

とはいえ、短期的な注文増の代償として企業の収益には再び重圧がかかります。

モルガン・スタンレーはこの動きに懐疑的な見方を示し、「この投資は得るものがあるのか」と指摘。仮に2030年までに即時配送市場が4兆元(約80兆円、1元=20円)に拡大しても、現在の年間500〜800億元にのぼる業界全体の値引き水準はリスクが大きいと分析しています。もし市場規模が想定の半分であれば、初年度だけで850億元もの損失が生じる可能性もあるといいます。

同社はこの見通しを踏まえ、美団、アリババ、京東(JD.com)の目標株価を引き下げ。今後3〜6カ月は株価の下落リスクが続くと警戒を示しました。

中国国内の大手証券会社も同様に、ネット通販大手が中核以外の領域に多額の資金を投じている点に着目。特に国内外の宅配や即時配送事業への投資が、今年の収益圧迫要因になるとの見方を示しています。

話題性のあるプロモーション施策で一時的な需要を喚起する一方で、企業体力と株主価値に与える影響が無視できないフェーズに入ってきました。割引を巡る「勝者なき競争」が、業界全体に再び影を落としつつあります。

参考:外卖补贴大战重启 “免费奶茶”上热搜 小摩追问“值得吗”

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