「若者が住んで、高齢者と暮らす」——そんな新しい共生の形が、中国で静かに広がりを見せています。
『36氪』によると、上海郊外の漕涇地区では、月額1500元(約3万1500円、1元=約21円)で若者が田舎の別荘に住みながら、「英語共学」「方言工房」「高齢者向けテクノロジー支援」などの活動を通じて地域の高齢者と交流を深めています。
この取り組みは「青銀共居」と呼ばれ、若者と高齢者が共同生活を通じて互いを支え合う新しいライフスタイルです。
特に注目されているのが、若者の住居問題と高齢者の孤独という二つの社会課題を同時に解決する点です。
例えば、広東省佛山市の「和泰中心・青椿公寓」では、若者が通常の5分の1ほどの家賃で入居し、月に30時間ほど高齢者の生活支援を行うことで滞在費が軽減される制度が導入されています。活動内容は、家具の移動の手伝いやレクリエーションの企画、スマートフォンの使い方のレクチャーなど多岐にわたります。
こうした取り組みは全国的にも広がっており、杭州市や麗水市のように地方自治体が主導するプロジェクトも登場しています。これらでは、若者に安価な住居を提供する代わりに、月10~30時間のボランティア活動を義務付けています。
一方、こうしたモデルはすでに海外でも実践例があります。オランダの「WZC Humanitas」では、大学生が高齢者施設に無料で入居し、30時間の高齢者支援を提供。スペインでも自治体が主導するプロジェクトが早期に導入され、成功を収めています。日本でも「ISEDAI」のようなマッチングプラットフォームを活用した居住型支援が行われています。
中国では現在、青銀共居の多くが高齢者施設を中心としたものですが、今後は居住型への広がりも期待されています。
『中国健康と老年追跡調査』のデータによると、2023年末時点で60歳以上の高齢者だけで暮らす高齢者は約1.6億人。特に80歳以上では半数以上が一人暮らしだとされています。こうした背景を踏まえれば、共生モデルの需要は今後さらに高まっていくかもしれません。
少子化と高齢化が同時進行する中国社会において、「青銀共居」は、若者と高齢者が互いを支える“新しい家族の形”として、より現実的な選択肢になるのかもしれません。