中国で高齢者向けの教育機関「老年大学」が、いま大きな注目を集めています。
『新華網』によると、ある男性がSNSで「ゲーム感覚で母のために講座を予約した」と語るほど、人気講座の予約は一瞬で埋まってしまうほどの盛況ぶりだそうです。
記事では、広西チワン族自治区南寧市の老年大学を取材。65歳の男性は、「AIを使って脚本を作り、動画の撮影から編集まで一人でできるようになった」と語り、5年間通っている女性は「知識だけでなく、友達もたくさんできた」と話しています。学びの場としての価値だけでなく、交流や生きがいを感じる場所としても機能しているようです。
2024年に発表された『中国老年大学発展状況調査報告』によると、中国の高齢者は「老後の楽しみ」や「社会貢献」への意欲が高まりつつあり、老年大学はそのニーズに応える重要なインフラになっています。
講座の内容も進化を続けています。伝統的な書道や舞踊、声楽に加え、AI技術の活用法、コーヒーのテイスティング、ショート動画の制作や観光英語など、新しいスキルを学べる多彩な講座が登場しています。
とはいえ、実際の開講数では依然として伝統的な講座が80%以上を占めており、デジタル系や実用系の講座はまだ発展途上にあるようです。
また、老年大学の設備も進化しており、多くの教室ではLED大画面や録画機材を完備。講義を録画して後から見直せるようにするなど、学びやすい環境が整えられています。
一方で課題もあります。全国で7.6万校以上あるにもかかわらず、登録者数は2000万人にとどまり、全体の高齢者(約2.1億人)に対してはまだまだ足りていません。特に地方や農村部では教室や教師の不足が深刻で、「授業がひとつも受けられない」という状況は今後も続きそうです。
このような状況に対応するため、最近では民間企業も参入しています。北京では高齢者向けのクラブが登場し、公立の老年大学では対応しきれないニーズに応えているようです。さらに、旅行と学びを組み合わせた新しいサービスも登場し、高齢者が観光地で健康維持と知的活動を同時に楽しめるようになっています。
このように、中国では「学ぶ高齢者」が増加中です。単なる趣味や時間つぶしではなく、社会とのつながりや自己実現を目指す場として、老年大学は今後ますます重要な存在になっていくと考えられます。
参考:一课难求”的老年大学