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中国で進む「以旧換新」古いクルマや家電はどこにいくのか?

中国では、古いスマホや家電、クルマを下取りして新しい製品を購入する「以旧換新」政策が注目を集めています。

これは「古いものを下取りに出して新しいものに買い替える」ことを指す政府主導の取り組みで、購入時の補助金を通じて消費を促すと同時に、廃棄物の再利用も進めようというものです。

『人民日报』によると、この政策の効果もあって、スマートフォンや家電、自動車のリサイクル産業は急速に拡大しています。安全かつ効率的な回収が多くの企業にとって掲げる目標の一つとなっています。

例えば、スマホが回収された後、その日にリサイクル工場に運ばれ、分解されます。

1台のスマホ基板には銀が0.19グラム、銅が25.8グラム、パラジウムが0.015グラム含まれており、さらに0.034グラムの金が抽出されるケースもあるそうです。その他、外装のプラスチックは再生され、パレットなどの製品に、スピーカー部分は補聴器用の部品として再利用されることもあります。

2024年には、全国で回収された古い家電が約63万トン、使用済みの車は約787万台と、前年比で大幅な増加を記録しました。

「以旧換新」政策は消費促進と同時にリサイクルの効率化による環境保護への貢献もあります。家電1トンのリサイクルで、約4.7トンの温室効果ガスの排出削減ができるとされています。

経済面でも効果は大きく、たとえば、1トンの古いスマホから約400グラムの金が採れるほか、1台の廃車からは約800キロの鉄と約40キロの非鉄金属が回収可能です。また、リサイクル関連の産業には全国で約3000万人が従事しています。

浙江省台州市では、100社以上が集まる「金属再生基地」が形成され、年間の再生金属の産業規模は189億元(約3780億円、1元=20円)にもなっています。

回収の過程で個人情報の保護も重視されています。スマホ回収では全工程を追跡可能なシステムが導入され、利用者の安心が確保されています。

ただし、課題もあるようです。回収所が近くにない、価格が安い、品質にばらつきがあるなどの理由で、非正規ルートでの処分が選ばれやすいという現状があります。こうした課題に対し、北京や広東ではスマホから回収の申し込みができる「e回収」などのサービスが整備され、より使いやすい仕組み作りが進められています。

こうした政策の背景には、「新しい製品を使うこと」と「古いものを無駄にしないこと」の両立を目指す価値観の変化があるように思われます。巨大な市場と製造力を背景に、中国はリサイクルの実践と制度整備の両面で先進的な取り組みを進めています。

今後、日本でもこうした取り組みが参考になる場面は多くなるかもしれません。モノの価値は「使い終わった後」こそ、問われる時代が来ているのかもしれません。

参考:“以旧换新”后,旧的去哪儿了?

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